最高裁判所第三小法廷 昭和24(れ)1330 判決
主 文
本件上告を棄却する。
理 由
被告人Aの上告趣意について。
被告人の上告趣意は、警察も地方及び高等裁判所も凡て被告人が罪人であるとの
先入意識を以て審理を進めたこと、被告人は拳銃を警察から押収せられたのでも発
見せられたのでもなく自ら進んで警察に届出たものであること、並に銃砲等所持禁
止令の第二回目の公布以前に届出たのであるから処罰される筈がないこと、殊に懲
役六箇月の実刑を科せられたことは諒解しがたいところである、ということに帰す
る。しかし銃砲等所持禁止令附則によれば、昭和二一年六月一五日当時に於て銃砲
等を所持している者は、同日から向う四箇月以内にその届出をしなければならない
のであつて、同年一〇月一五日以後届出なしに銃砲等を所持して居れば、同令違反
の罪に該当するのである(なおたとえ右の届出期日内と雖も必ずしもその所持を処
罰しないという法意でないことも判例=昭和二二年(れ)第一八一号同二三年四月
一七日第二小法廷判決=の示す通りである)。尤もその後昭和二三年二月二四日附
米国第八軍司令部司令官室より日本政府内務省警保局長宛の「日本の刀劔並に銃砲
の回収、類別及び処分」と題する覚書(APO三四三)によつて、刀劔並に銃砲の
登録申請の受付及び処理を同年六月一日迄延長することが許可されているが、これ
とても右期間内に届出さえすれば、その武器の種類若しくは事情の如何を問わず凡
てこれを処罰しないという趣旨ではないのであつて、本来の期間中に登録しなかつ
た事実に対する完全にして且つ簡明な釈明を添えて申請がなされ、しかも都道府県
警察当局において、この釈明が真正なものであつて情状酌量すべきものと思料した
場合には、申請者に対して懲罰手段に出てはならないとしたものに過ぎないのであ
る(昭和二三年(れ)第一一二一号同二四年四月二日第二小法廷判決参照)。 し
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かるに原判決が確定している事実は、被告人が昭和二二年五月下旬から同年九月末
頃までの間法定の除外事由なくして大型拳銃一挺を自宅に隠匿所持していたという
のであつて、しかも右の覚書の処罰してはならないという事由に該当するような事
実のあつたということは、原判決の認定していないところであるから、被告人が本
件犯罪の刑責を免れ得ないことは当然である。そうして既に犯罪が成立する以上、
量刑の不当は適法な上告理由となり得ない。なお記録を調べてみても、原審が所論
のような予断を抱いて審判したものであると疑わせるような形迹は認められない。
よつて論旨は何れの点も採用することができない。
弁護人小山隼太の上告趣意について。
論旨は、被告人の供述が第一審と第二審とにおいて異なる場合には、証人の喚問
を求め得る被告人の憲法上の権利が保障されなければならないに拘らず、原審が証
人の申請を全部却下し、而も第一審公判調書を証拠に採用したのは、被告人の権利
を不当に制限したものであり、審理不尽の違法を犯すものであるということに帰す
る。しかし裁判所は、健全な合理性に反しない限り、自由裁量の範囲で適当に証人
申請の取捨選択をすることができるものであつて、憲法第三七条第二項の規定が、
裁判所は被告人側の申請にかゝる証人の凡てを取調べる義務を有するという意味で
ないことは、既に当裁判所の判例(昭和二三年(れ)第八八号同年六月二三日大法
廷判決)に示されている通りである。原審で弁護人が証人喚問により証明しようと
したのは、被告人が判示拳銃の所有者でなくて管理人であること並に被告人は自首
又はさなくとも進んで届出提出したものであることであるが、それ等のことに関し
て論旨に主張されているような事実は、何れも記録によつて十分に認め得られると
ころであるから、原審に於ても更に費用と日時をかけて前記申請にかゝる証人を訊
問する必要なきものとして、全部を却下したものであることが察知せられる。さす
ればそのことが健全なる合理性に反するとも云えないし、審理不尽とも認められな
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い。この理は、被告人の供述が第一審と第二審とに於て異なつた場合でも、同様で
ある。裁判所がその自由心証に従つて真実と認めるものである限り、第一審におけ
ると第二審におけると何れの供述を証拠に採用しても、何等の妨げもない。よつて
論旨は何れの点も採用することができない。
以上の理由により最高裁判所裁判事務処理規則第九条第四項及び旧刑訴法第四四
六条に従い主文の通り判決する。
この判決は裁判官全員一致の意見によるものである。
検察官 安平政吉関与
昭和二四年一一月一日
最高裁判所第三小法廷
裁判長裁判官 長 谷 川 太 一 郎
裁判官 井 上 登
裁判官 島 保
裁判官 河 村 又 介
裁判官 穂 積 重 遠
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